職員室前の長い廊下を歩き終えてから、ゆっくりと階段を降りて行く。
いつもは長く感じる駐車場までの道が今日は特別短く感じる。
冨田先生と話す時間の終わりが刻々と近づいてくる。
「あ、そういえば、甲田先生?」
「何ですか?」
階段を先に降りていた冨田先生が急に俺の方へと顔を向ける。
「甲田先生こそ大切な方と何かご予定があったんじゃないですか?」
「え…。」
驚く顔をする俺に追い打ちをかけるように、冨田先生はニヤッと表情を変える。
「気づいていないと思いますが、甲田先生も書類書きながら何度も携帯を確認してましたよ。大切な方からの連絡をお待ちだったんじゃないですか?」
「………あー、はは、そうですね。」
冨田先生に言われるまで全然気が付かなかった。
1・2回は時間を知りたくて携帯を見たとは思っていたが…まさかそんな頻回に見ていたとは…。
もしかして、俺は無意識のうちに伊緒からの連絡がくるのを待っていたのか?
泊りをやめるように言ったのは自分なのに、本当はどこかで伊緒に来て欲しいと思っていたのかな…。
「………もしかして、お付き合いされている方ですか?」
「あ、はい…恥ずかしながらそうです…。」
「えっと確か……あぁ、片瀬さん、でしたっけ?」
「はい、そうなん……っっえぇ!!!??」
静かな学校に俺の大きな声が響く。
そしてそれと同時に俺の目は大きく見開かれ、さらに進んでいた足は止まっていた。

