「…おいコラ、弓鶴(ゆづる)ー!」


「はいはいはーい。」

大声で名前を呼ばれ、
笹伊部 弓鶴(ささいべ ゆづる)は適当に返事をしながらダルそうに顔を振り向く。


「はいは一回!」

「お前は親か何か。」

弓鶴は心底呆れる。

彼は、自分の近くへ寄ってくるこの男、
市松 瑞貴(いちまつ みずき)を思い切り払い除けたい気分だ。



「何?」

「お前、日直サボんの?」

唐突な覚えの無い市松瑞貴の問いに、弓鶴は眉を顰める。

「今日俺日直?」

「知らねーのかよ。
間抜けだよなぁお前も。」

「お前もってなんだよ。」

相変わらず口の悪い友人だな、と弓鶴は思う。

だが帰宅寸前だった彼を呼び止めてくれたのだから、一応感謝の文句を告げる。

すると市松瑞貴は非常に整った顔を綻ばせ、「どう致しまして」と不器用に言う。


別れを告げ、弓鶴は早速教室へ引き返る。