「まるで対頂角」

 水晶を上から見て彼女が言った。

「いや全然違うと思うけど……」

 そもそも水晶は六角柱状だから全然違う。

 対頂角っていうのは、二直線が交わってできる四つの角のうち、向かい合っている二組みの角。

 対頂角は互いに等しい。というやつだ。

 場を和ませようと言ったんだろうけど、無理がありすぎる。

 風が吹いて、僕の前を桜の花びらが落ちながら通り過ぎていく。

 花曇りだった僕の心は、いま晴れやかだ。

「これからよろしく、七つ賀 美保子さん」

「こちらこそよろしく」

 二人は笑みを浮かべてひまわりの種を食べ合った。


 END


*お付き合いいただきありがとうございます。
 少しでも楽しんでいただければ幸いです。

 2014/04/03 河野 る宇