「ま、頑張りなされ」

凜子の手が肩に乗った。
何よそれ‼なんで哀れみの目で見るのよ?!
なんで興味津々な笑顔?!!

一度咳払いをしてから私は凜子にお礼を言って

本当に運命の扉を開いた。

部署内は案外普通でデスクが何個かあるだけ。

「ん?うちの部署になんかようか?」

うっわ。出た出た出た。美男子出た。
茶色の綺麗な髪はすこし跳ねている。

目は細長くてまつ毛ながッ!

「えっと、本日付で問題解決部に異動になりました
 四ノ宮蘭です。」

「移動の子?あ、女の子だったんだ。ごめんねちょっと待ってね」

そういうと彼は奥の事務室に入って行った。

それにしても…

一番目からあんな美形に会ってこれから不安だわ。

胸ポケットでケータイの振動が伝わってくる。

あれ?凜子だ。

【ご愁傷様。いいじゃないイケメンがいて】

嫌味か?新手の嫌がらせか?なんでしかもメールで?

ムカつくわぁ

「ごめんね、待たせちゃって。」

「君が四ノ宮蘭ちゃんかな?」

奥の事務室から出てきたのは少し年の取ったおじさん。

「私はこの部署の部長をしている佐藤一。よろしく頼むよ」

「あ、僕の名前は三ケ原神(ミカハラジン)よろしく。」

彼はそう言ってまぶしい笑顔を向けてきた。

まぶしいぃ。

「ここが蘭ちゃんのデスクね。PC壊れてたら言って?すぐに直すから。」

「すみません。何から何まで…」

「いいのいいの。あとで部署の人紹介するからそれまでにデスクの整理とかしといてね」

「はいありがとうございます」

遠ざかる背中に私は溜息をついてからデスクの整理へと取りかかった。

デスクの数から数えると人数がおよそ5人ほど。
一番真中の奥のデスクは部長のデスクだから…
他にも三ケ原さんを入れて三人がいるのかな?

意外と人数少ない。

「んだよ。いちいち」

扉側から声がした。それはめんどくさそうなだるそうな声。
声を聞いただけでどんな表情をしているのかが分かる。

誰だろ?あ、もしかしてあと三人?

振り向いた先にいたのは

「めんどくせぇまだ昼休みだろ?」

「そうだけど。」

金色の髪に赤のメッシュ。ピアスやら指輪やら
スーツも崩してきている。

社員としてどうなのかしら?メッシュって…

そうじゃなくて‼

ものすごく怖そうなんだけど。

「新しい奴って…真三さんはどうしたんだよ。」

「腰痛めちゃってもう退職した。」

三ケ原さんと一緒に徐々に近づく男。

その距離約二メートル。一・五メートル。

一メートル。

四十センチ

「なんだ、ちびじゃねえか。てか女かよ。」

怖い!怖いです!

「やめろって蓮失礼だろ」

三ケ原さんが止める者の蓮と呼ばれる男は私を足から顔まで見て

……

鼻で笑った。

「ちょっとなんなんですか!人を見るなりチビだの女だのしかも鼻で笑うって‼
 人として常識が足りないんじゃないですか?!!」

「…」

あ。しまった。

すぐさま私は口を手で覆うが二人は固まったまんま。

そして少しすると三ケ原さんがお腹を押さえて笑い出した。

「ちょっとなんなんですか?!な、何がおかしいんですか?!!」

「ご、ごめッだって蓮にそんな堂々と言ってる子初めて見たから
 なんか面白くなってきちゃってッ、ぶッあはははははははは」

「おい‼神笑ってんじゃねえよ!」

「ご、ごめん。無理」

そういってまだまだ笑い出す三ケ原さん。

蓮さんの眉間の皺がものすごいことになっている。

私まだ二十四なんですよ!まだ死にたくない‼

という私の心の叫びと裏腹に三ケ原さんは笑いだす。

「はあ、笑った笑った。」

「笑った笑ったじゃねえよ。そのチビ誰だよ」

「ちびじゃない‼いや、待て。確かにチビだけど‼」

「自分で認めんのか?」

「認めてない‼あれ?でも認めたことになるのかな?」

「認めてるだろ。」

「認めてる‼じゃなぁああい‼」

私は咳払いをしてから蓮さんに向きなおった。

「私は四ノ宮蘭です。本日付で移動になりました。よろしくお願いします」

「四ノ宮蘭?タマとかじゃなくてか?」

「なんで猫なのよ!!!」

猫ってなんで‼人間じゃないじゃない‼

「私は犬の方がいいのよ!!」

「そうゆう問題?」

「じゃあポチでいいだろ。」

「ポチならいい!」

あれ?いいのか?

蓮さんはやったと言わんばかりの笑みを浮かべた。

しまった‼何自分が犬ですみたいなことを言ってんのよ!

ポチでも駄目に決まってるじゃない‼‼

「まあ蘭ちゃん紹介するよ。こいつは一根 蓮(カズネレン)」