突き抜けるように白い壁、蛍光灯の光を反射するリノリウムの床。


狭い真四角のその空間に響き渡るのは、規則正しい機械音。

そして、黒い画面に映し出される、一定のリズムを刻む緑色の線。


緊迫した大人たちの怒号か飛び交うその真ん中で、静かに静かに眠るのは、そう。



紛れもない、僕の妹だった──。




こみ上げる辛い気持ちを振り切るようにして、僕は一人、立ち上がる。


これ以上アイツのことを思うと、“自分”が壊れてしまいそうで。


だから、考えるのはもうよそう。

思い出すのは、もうやめよう。


唇を噛み締めて、僕は僕自身に言い聞かせた。


でも、それはつまり言い方を変えれば、ただの“現実逃避”なのである。



僕は恐ろしい現実から目を背け、どこまでもどこまでも逃げ続けるのだ。



これから、ずっと。永遠に。