「滅多にない、恋香の噂やで?しかも、恋愛やで!!ニヤけるやろ!」


 そう、藍に腕で突っつかれた覚えがある。


「なんやて・・・、なんか藍怖いで。」


 噂されてる私は特に気もとめることなく。


 藍のニヤけ顔を怖いって言ってた。


「このー!噂なんてされてー!ちょっとはテンション上がらんの!?」


 私より、藍の方が全然楽しそうだ。


 きっと、このままいけばー、みたいなこと考えてんやろな。


「えー、だってさ。葵衣がおるやん?」


 村西葵衣。<ムラニシ アオイ>


「あー、葵衣なー・・・。」


 藍が突っつくのをやめた。


 葵衣。日向と同じように中学2年生になって、初めて同じクラスになった。


 私たちが通う北方中学校は、北方小学校からそのまま持ち上げになっているので、変わる人なんてほんの3、4人。


 葵衣は、初めて同じクラスになった私にこう言った。


「今年、1年間よろしくね!あ、あたし日向のことがずっと好きだから、あんま喋らんでね!」


 最後に音符がつくような声で葵衣はそう言った。


 そして、葵衣と共に行動していた友達が私に言った。


「葵衣は、幼稚園からずっと日向を想ってるんだよぉ。横から取ったりしたら、葵衣泣くからやめてね!」


 睨みつけるように、そう私に言った二人。


 その後は、日向にあまり話しかけない私に安心したのかよく喋っていた。


 最初の印象が最悪だったけど、仲の良い友達になっていった。


「葵衣。そうだなー、あの子。本当に日向一筋だからなー。」


 腕組みをしながら、藍は考えたようにうつむいた。


 藍は、葵衣と幼稚園から同じ。


 しかも仲が良い。