オオカミとお姫様




「…到着いたしました、坊ちゃま」

いつの間にかマンションの近くまで来ていた。
長谷川がドアを開けてくれる。

「サンキュー」

「坊ちゃま、一つだけ申し上げてもよろしいでしょうか?」

「あぁ」

「坊ちゃま、人は思い通りにならない生き物でございます。時には腹立たしく感じることがあるでしょう。不安に思うこともあるでしょう。信じられなくなることもあるかと思います。そう思うという事は、坊ちゃまが成長なさっている証拠にございます。思いやろうと努力なさっているということです。坊ちゃまは今、成長なさっているのです。色々な感情が湧き出て悩まれているかと思います。それでいいんです、坊ちゃま。1年前の坊ちゃまと比べて、表情が明るくなりましたね。きっと、楽しい生活を送っていらっしゃることなのでしょう。私はそれが青春だと考えております」

「長谷川…」

心にスッと入っていくような言葉だった。
心が洗われたような感覚に陥った。

「申し訳ございません、長々と。ですが、どうしても今の坊ちゃまにお伝えしたくて…」

「いや、むしろ言ってくれて嬉しいよ」

「そう言っていただけて光栄にございます」

「あぁ」

「では、ここで失礼させていただきます。たまには帰ってきてくださいね。私でよろしければ話し相手になりますので」

「そうだな。たまには長谷川のくだらない話を聞いてやらないとな(笑)」

「はい。では、先に失礼させていただきます」

長谷川は深々と頭を下げ、車に乗り込み、馬鹿デカい家に戻っていった。