オオカミとお姫様

…!!
俺は何してるんだ。
ここに連れてきたのは詩音を抱きしめるためじゃない。
詩音は俺の事を『嫌いじゃない』と言ってくれた。
俺だって詩音の事嫌いじゃない。好きだ。

けど、このまま一緒にいたら詩音は嫌な思いしかしない。
そんな思いをさせないためにここへ連れてきたんだ。
これでいいんだ…

「…やっぱ俺、学校向いてないかもな」

「え?」

「狭いし、窮屈だし…」

「そっそんなっ」

動揺する詩音。
そりゃそうだよな。
今さっき蟠りがなくなったとこなんだから。

「このままじゃ、本当に詩音に嫌われる」

「そっそんなことないです」

そう言ってくれると思った。

「俺じゃ詩音を幸せにしてやれない…泣かしてばっかの俺が、詩音を笑顔にしてやれるわけがないから」

ショックを受けたような表情の詩音。
また涙を溢れさせている。
必死に必死に涙を拭っている。

「ちっ違うんです!!これはその、っ…」

わかってる。
わざとじゃないことくらい。
でも、俺のせいで泣いてるのは事実。

「今までもこうやって泣いてたんだろ?俺のせいで」

何度詩音の泣き顔を見た?
一度や二度じゃない。
好きな女笑顔にすることもできないなんて、一緒にいる権利なんてない。

「な?そんな俺に、お前と一緒にいる権利なんてないんだ」