「こーよーみっ、何してる…
っあれ?」
突然の掛け声に、暦は肩を大きく跳ね上げさせ、後ろを向く。
そこに立っていたのは小柄な女で、
暦は彼女が同期生の
簗田 雛(やなだ ひな)だと言う事にすぐに気づいた。
彼女は髪に丸くて可愛らしいパーマを掛けており、薄く化粧もしていた。
「簗田さん。」
暦は一応彼女の名前を呼んでみると、
簗田雛は顔を上げ、不服そうな表情を作る。
「ヤダ、暦ったら。
まだ私の事簗田さんだなんて呼んでる!
そりゃ出会ってまだ日は浅いけどさ、
いつまでも他人行儀なんだから、もうっ!」
そう言って頬を膨らませる彼女の姿は、とても魅力的で可愛らしかった。
暦は微笑む他無かった。
彼女は、人を下の名前で呼ぶのに慣れていないのだ。
電話帳でも名前記入には苗字しか入れない。
第一、人の名前を覚えるのにもかなり苦労するタイプなので、暦は人の名前を覚えるのに時間が掛かる。

