椎奈が帰って、静かになった教会の中で、俺は考えていた。 ──どうしたら、椎奈を悲しませることなく、真実を教えることができるか。 そんなことしか考えられない俺に、嫌気が刺す。 そして、考えるだけで行動することができない俺にはもっと嫌気が刺す。 あの日、椎奈に初めて会った日に言ってやればよかった、と後悔した。 でも、今後悔しても、もう遅い。 人生ってのは、そういうものだ。