「君、めちゃくちゃ可愛いじゃん。
一緒に飲みに行こうよ」


そのうちの一人があたしの肩に手を載せる。


可愛いことなんて言われなくても分かってる。
ていうか、気安く触らないでよ。
あたしはそう言いたい気持ちをぐっと堪えて笑顔を作ると、


「人を待ってるんで」


側の居酒屋に目をやって、彼氏が会計を終えるのを待ってる彼女の振りをする。


「でもさっきからずっと一人じゃん」


何だ、見てたのね。
それならそうと早く言いなさいよ。


嘘をついても無駄だと悟ったあたしは、諦めて二人をよく見る。
女受けする顔立ちに流行りの服装。
まずい。
見た目に自信がある奴ほど、簡単には引かないから面倒なのだ。


「飲みに行こうよ、 奢るから」


男たちがあたしの腕を掴む。


やばい、腕力じゃ敵わない。
慌てて辺りを見回したけれど、酔っぱらいばかりで、あたしの助けを求める視線なんて誰も気に止めてくれない。


「離して下さい」


「いいじゃん、飲みに行くくらい」


嘘つけ。
どうせあわよくば、あたしを酔わせてホテルに連れて行こうくらい考えてるくせに。