部長は主任と何にもないと言っていたけれど、それが本当かは分からないし、そもそも火のないところに煙は立たない。


彼が葛城主任に好意を抱いているのは、関わって日の浅いあたしの目にも明らかだし、新人の頃から目をかけてきたかわいい部下で、しかもあんなに美人なら、そういう気持ちになってもおかしくない。


葛城主任だってそう。
あたしが和田さんとキスしたと聞いても平然としてたのは、和田さんはその程度の相手だったからかもしれない。
本命は部長なのかもしれない。


部長がいつも葛城主任を立てるのも、昨日待ち合わせをしていた主任がいつもよりキレイに見えたのも、二人がデキていると考えれば全てがしっくりくる。


書類上ではホテルの部屋を二つ取ってても、実際に使ったベットの数は当事者にしか分からない。
想像したくないのに、昨日の二人の姿が頭に浮かんで消えやしない。


出張申請書をスクロールする手が震える。
何であたしこんなに動揺してるの?
あいつが気になって堪らないなんて、認めたくないのに…。