散々悩んだ挙句、手触りの良い少し上等なグレーのハンカチを選んだあたしは、包装を待っている間ぼんやりと考えを巡らせる。


沙織に指摘されるまでもなく、部長のことが気になっている自覚はあった。


ハンカチを借りたのが部長じゃなかったら、きっとこんなふうにお詫びなんて買いに来なかった。


実際、大事なアフター5を割いてここにいるわけだし。
昨日和田さんに振られたばかりにも関わらず、今だってこうして部長のことばかり考えてしまっている。


お茶の淹れ方も、残業にしたって。
他部署の新人に過ぎないあたしのことを、きちんと見てくれてたのも嬉しかった。


だけど、惚れたわけじゃない。
初めて面と向かって話した時の第一印象が最悪だった分、接する度に上方修正されてるだけだ。


うん、そうに違いない。
あたしは自分にそう言い聞かせながら、ハンカチを受け取った。