手からこぼれ落ちた書類が床に散らばる。
本当に今日は最低最悪。


慌ててそれをかき集めていると。
高く響く足音があたしの前で止まった。


あたしと同じか、それよりも高いヒール。
このフロアでそんなのを履きそうな女は一人しかいない。


ゆっくり顔を上げると、案の定、今日一番会いたくなかった女が目の前に立っていた。


「大変」


葛城主任はスカートの裾からセクシーな太ももを覗かせながらしゃがみ込むと、書類を拾い始める。
男性社員にはサービスでも、あたしにしてみればいい迷惑なんですけど。


「…大丈夫です。
一人で拾えますから」


態度が悪いのは自覚しているけれど、昨日の今日で、葛城主任だけには助けられたくない。


あたしは可愛いげのない口調で断ったのに、主任は意に介する様子もなく笑って言った。


「二人の方が早いわよ」


その大人な対応が余計にあたしを惨めにさせる。