「…あの日は魔が差したんだ。
言い訳にもならないけど…」


「だったら、もう一度魔を差してよ」


あたしは和田さんの腕を引き寄せると、そのまま強引に唇を奪った。


あとはなし崩しに事が運んでもいいのに、和田さんはいつまで経っても応えてくれない。


あたしは痺れを切らして、唇を離した。


「───何であたしじゃ駄目なんですか?
あたし努力します。
髪も服も、全部主任みたいにするから…」


「ユミちゃん、違うよ」


和田さんは唇に残ったあたしの口紅を拭いながら言う。


「俺が惹かれてるのはサキさんの外見だけじゃない。
中身なんだ」