慌てて会釈をすると、和田さんは一緒にいた人たちに何か言い残してこっちに向かって歩いて来た。


わっ。こっち来る。
あたしは慌てて髪を手櫛で整え、姿勢を正す。


「さっきはありがとう」


和田さんはあたしの前で足を止め、柔和な笑顔を見せて言った。


「いえ。どういたしまして」


「この間のお詫びも兼ねて、お礼しないとな。
何がいい?」


なんだ。
いくらマイペースな和田さんとは言え、あの夜あたしをほったらかして帰ったこと、少しは気にかけてくれてたんだ。