「沙織はあいつの本性を知らないからそんなこと言えるのよ。
典型的ドSの俺様なんだから」


そんなあたしの酷評を気にする様子もなく、沙織は不敵な笑みを浮かべる。


「いいじゃない、それくらいの方が魅力的だし。
興味ない?
そういう強引な男が、好きな女の前でだけ、どんな顔するのか」


うわ、悪趣味。
あたしはあいつの恋愛事情なんてこれっぽっちも興味ない。


「もし小泉部長に会社では見せないような顔で口説かれたら、あたし落ちちゃうかも」


「…天地がひっくり返ったってそんなことないわよ」


あんな、人の嫌がることをずけずけと言う男の口から、甘い言葉が出るわけないじゃない。


沙織がうっとりと漏らしたありえない発言に、ため息をつきながら何気なく辺りに目をやると。
窓際の席から立ち上がる数人の中に和田さんの姿を見つけた。


社外ランチ組なのに社食に来るなんて珍しいな、なんて思っていると、和田さんは不意にこっちに目を向けた。