やっぱり食事くらい行っても良かったかな。
交際相手としてはこれ以上ないくらいの好物件なのよね、と後ろ髪を引かれつつ、あたしは気を取り直してデスクで会計ソフトを立ち上げる。


後藤さんの領収書を日付順に並べながら、その中の一つに仕事の接待で使ったとは思えないような高級ホテルのバーの名前があるのに気付いた。


やっぱり誘いに乗らなくて正解。
もしかすると、複数いる彼女のうちの一人にされるところだったかもしれない。


二股をかけるのも嫌だけど、かけられるのは絶対に嫌。
自分の判断が間違ってなかったことにホッとひと息つきつつ、あたしは帳簿に入力していく。


経費で落とせるのは仕事に関わる出費だけ。
…というのは建て前で、現実は結構アバウト。


接待以外の飲食代、電車を乗り過ごしたタクシー代、果ては私用のお菓子まで。
みんな自分勝手な領収書を紛れ混ませてやってくる。


あまりに酷い用途の場合は突き返すけど、受け取った領収書を帳簿に記録して、現金との差がないように管理する。
それが経理部のあたしのルーチンワーク。