「なんだ。
それで部長の側には主任が張り付いてたんだ」


「だから何度も言ってるだろ。
お前が誤解してるような関係じゃないって」


部長はそうやって迷惑そうに言うけど。
誤解されてるって分かってるんだったら、もっと二人は何でもないって公にすればいいのに。


あ、でもそうしたら部長は飲み会で葛城主任を利用できなくなって、お酒飲めないのがバレるし。
主任にしたって、和田さんと付き合ってるのをごまかすのに丁度いい隠れ蓑がなくなっちゃうのか。


全てが分かってみると、もしかしたらあれはあれで、なかなか均衡の保たれたいい関係なのかもしれない。


「むしろ葛城は叔父貴が一番苦手なタイプだよね。
二人の噂が耳に入る度、おかしくって」


以前部長に葛城主任の入社したての頃に似てると言われたことのあるあたしには、ちょっと耳が痛いけれど。


部長のことを知り尽くした後藤さんがそう言うなら、今度こそ本当に葛城主任とのことを疑う必要はないのかもしれない。


今まで何度も否定されたとはいえ、ずっと気になっていたモヤモヤがなくなってホッとした途端。
部長の面白くなさそうな顔に笑いが込み上げてくる。


「部長ってば。
そんな偉そうな顔して葛城主任のお世話になってたなんて」


くくくく。
あたしが笑いを堪えきれずにいると、


「同じやつを」


まるで照れてるのを隠すように、部長は店員にもう一度ウーロン茶を注文した。