「そんな呑気なこと言ってていいんですか?
部長のこと利用するだけして、用が済んだら他の男に手を出すなんて酷すぎます」


あたしは目に涙を浮かべる。
もちろん演技だけど。


この際、手段なんか選んでいられない。
和田さんを手に入れるためには、部長を煽るしかないのた。


「部長と葛城主任って、すごくお似合いで、あたしずっと憧れてたのに…」


なんてね。
チラッと部長を見ると、あたしの迫真の演技にすっかり騙されたのか、ぽつりとつぶやいた。


「憧れ、ねぇ…」


何だ。
仕事の鬼って印象しかなかったけど、結構しおらしいとこあんじゃない。


やっぱり男なんて単純。
あとはせいぜい葛城主任をしっかり掴まえててもらおう、なんて勝利を確信した瞬間。


「───悪いけど、俺と葛城の間には何もないぞ」


部長は呆れたように言った。