月宮天子―がっくうてんし―

愛子はあまりのショックでギュッと目を瞑る。

だが、鼓動が止まれば玉は飛び出してくるのだ。蓮がどうするのか心配で、愛子はそうっと目を開けた。


蓮は光の消えた白木の棒を、腰のベルトに挟んだ。そして、ポケットから白い手袋を取り出す。それはなぜか片方だけで……当たり前のように左手に嵌めたのだった。

その直後、斉藤は白煙を上げながら人間の体に戻り、胸の中央に黄色い玉が浮かび上がり、弾け飛んだ。

――パシッとキャッチボールの感覚で蓮は左手に納める。

愛子はドキッとしたが、蓮に変化はない。宝玉も左手の中に納まったままだ。


「おい。お前、宝玉のことを知っているな。何者だ」


宝玉を掴んだまま、蓮は愛子を振り返った。

まるで、愛子を獣人族の仲間だと疑っている目だ。


「知らないわよっ! 化け物が襲ってくるだけじゃない! 理由はあっちに聞いてよっ!」


ちょっとでもカッコいいと思った自分が馬鹿だった。愛子はそんな風に思い、心の中で海に謝る。


海……ところで海は何をやっているのだろう?


そう思った直後、蓮がやけに周囲を気にし始める。


「どうしたの?」

「連中の気配がする」

「カイたちが襲われてるのかも! お願い助けて! あなた強いんでしょ?」

「……」