月宮天子―がっくうてんし―

海は愛子を急かし、襲われた路地に駆けつけた。

だが、そこにあったのは革ジャンやスカートの残骸だけ。行き止まりのはずが、白露の姿も、蓮の姿もない。もちろん、バイクに掛けたジャケットも消えていたのであった。



学校までの道のり、海は必死になって直子との一件を説明する。


「実は……病気なんだ」

「はい?」


なんと、女性に誘惑されると意識がなくなる、と言うのだ。そして気がついたときには、すべてのコトが終ったあとらしい。

悪意も他意もスケベ心もない、病気なんだ、と海は熱弁を振るう。

愛子は海の馬鹿馬鹿しい言い訳に呆れ返るばかりだ。


「そんな都合のいい病気があると思ってるの? 道理でね、中学や高校の教師は無理ね」

「ど、どうして?」

「告られるたびにエッチしようもんなら、すぐに淫行で逮捕よ!」

「だから、告られたくらいじゃ、ああはならないんだ。もっと明確に、こう」

「……その手、やらしい」


まるで女性の胸を揉むような仕草に、愛子は冷たい視線を向けた。


「とにかく! 幼稚園児に手を出して、捕まったりしないでよね。迷惑だから!」


愛子にボロクソに言われ……海は校門に着くなり追い払われたのであった。