月宮天子―がっくうてんし―

ひと際大きな断末魔の悲鳴を上げると、最初の化け物は仰向けに倒れ込んだ。

その体はシュウシュウ音を立てながら、少しずつ人の姿に戻って行く。まるで、焚き火に水を掛けたときのように……白煙が血に染まった境内を覆い尽くした。

そして、最初の化け物が満月に向かって伸ばした毛むくじゃらの手は、少しずつ毛深い人間の手に変わり……。やがて、力なく崩れ落ちたのだった。


そのとき、最初の化け物の体から、緑色の光を放つ玉が弾け出た。

ちょうど胸の中心、心臓の辺りからだ。それは、コロコロと境内を転がり、愛子たちの方向に転がってくる。


「あ、あれは!」


海に支えられながら、声を上げたのは佐々木警部だった。


「知ってるんですか?」

「いや、でも、アレと同じような赤い玉を、ついさっき小学校の校門の所で見つけたんだ。そして彼が」


海の質問に、警部は答えながらゴリラを指差す。


「拾ったんですか?」

「うむ。それが、手にしたはずが消えたと言い出して。付近を探したんだが見つからなかった。そう、ちょうどあんな大きさで」


緑の玉は満月の光を浴び……なぜか、嬉しそうに見えた。

なぜそう見えるのか、愛子にもよくわからない。だが、自然に転がるのではなく、こっち……どうやら海に向かって転がってくるみたいだ。

そう――海に向かって。