月宮天子―がっくうてんし―

宝玉はないはずなのに、いったいどうする気なんだろう?

はらはらする愛子の隣で、朔夜も息を飲む。


そして海は、腹の底から喊声を上げた。


「――変身!」


一刹那、天空に浮かんだ満月が無数の星となり、海に向かって流星のように降り注いだ。真珠色に光るシャワーを浴び、海の体は真っ白の光に包まれる。

あまりの眩しさに、愛子たちは目を開けていられない。

その煌く光の中から現れたのが――素晴らしい光沢を持った純白のヒーロー『月宮天子』だった。


湖面が風に煽られ、大きく波打った。


千並湖周辺の森に住む、多くの野生動物たちの眠りを邪魔するように、海――『月宮天子』は眩しい光を放っていた。

それはパールホワイトメタリックというか……月の雫と言われる、真珠のような色だった。


「さ、さっきの何? なんで満月? まるで、小さい月が降って来たみたい」


愛子の疑問はもっともだろう。

ついさっきまで、三日月が空にあったのだ。それがいきなり、満月になる訳がない。そんな愛子に朔夜が答えた。


「あれは『月光玉』だ。宝玉のひとつで、『月宮天子』の力を最も引き出す……ここまで、気配すら見せてなかったのに。きっと、カイ自身が『月宮天子』になると言うのを、傍に居て待っていたのだろう」

「ねぇ……カイはどうなっちゃうの? そのまま『月宮天子』になって、かぐや姫みたく月に帰ったりしないよね?」