月宮天子―がっくうてんし―

「『月宮天子』は死なない。絶対に負けないっ!」

「違ったらどうするの? 『月宮天子』じゃなかったら? たまたま変身しちゃっただけなら、どうするのよっ!」

「カイは死なない。真冬の海(うみ)に流されても生き残った。兄上は絶対に負けないっ!」


愛子だけではない、朔夜の指も震えていた。怖いのは同じなのだ。使命感と兄を想う心がない交ぜになり、愛子より先に朔夜のほうが泣き出しそうである。


氷月の三度目の攻撃は、ついに海の喉元を狙ってきた。

仰向けに押し倒され、喉に牙を立てようとする。


組み合ったふたりはお互いしか視界に入っていない。もちろん愛子もだ。だが、朔夜は違うことに気づいたらしい。


「れ……ん」

「え?」


ひとつの影が気配を殺し、上になる氷月の後ろからそっと近づく。

そして、蓮は氷月の首を狙い、一気に光の剣を突き出した。


氷月は突然の殺気に右前に飛んだ。金色の毛皮に、わずかながら傷が入る。


蓮の、渾身の一撃は紙一重でかわされた。

氷月は怒りの咆哮を上げ、跳ねるように蓮に襲い掛かる。蓮は動かない……いや、動けない。

天泉、氷月と立て続けにやられた傷は、相当深いはずだ。今の蓮じゃ氷月の攻撃は絶対にかわせない。

そのとき、朔夜が叫んだ。