月宮天子―がっくうてんし―

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全身から水を滴らせ、海は湖中から姿を見せた。

愛子はボート小屋の中から、裏手に移される。海は桟橋の残骸にちらりと目をやり、すぐに蓮の方に視線を移した。

愛子が叫ばないように、白露の翼が口を覆っている。

小屋の隙間から海の姿は見えるのに、あちらからは見えないようだ。


海が蓮に近づくと、愛子の視界から外れた。姿は見えないが声だけは音だけは聞こえる。


「蓮さん! しっかりしてください! 蓮さん!」


おそらく蓮は意識が落ちたままなのだろう。まさか……死んでないよね。と愛子は不安になるが、とりあえず今は海も危険なのだ。

ギシギシ音がする。多分、海が木に登って蓮を下ろしているのだろう。

ドサッと蓮が下に降ろされる音がした直後――。


「ご苦労だったな『月宮天子』。宝玉をこっちに渡してもらおうか」


森の中から姿を現したのは、氷月だった。天泉を連れている。

そのとき、愛子は白露に引き摺られボート小屋の横に立った。


「カイッ!」

「愛ちゃん! 無事か? 怪我はない?」

「なんで来たのよ、バカッ! カイは弱いんだからね、殺されちゃったらどうするのよ!」

「無事……みたいだね」


海はすでに木から下りていた。足元には蓮が横たわっている。