月宮天子―がっくうてんし―

蓮は『光剣』抜き、再び突き立てようとするが……。

天泉に振り回され、桟橋の残骸に叩き付けられた。しかも、すぐにあの丸太のような腕で横薙ぎにされ、蓮は水際まで吹っ飛んだ。


「ちょ、ちょっと、レン!」

「静かにおし。ふふふ。人間の分際でしゃしゃり出てくるからさ」


蓮の持つ『光剣』から光が消えていく。

白木の棒を水際に突きたて、蓮は胸を押さえてどうにか立ち上がろうとする。しかし、その背後からさっきの氷月が殴りかかった。

こうして見ると、氷月の髪は瞳と同じ金色だ。月光を浴びているせいだろうか、キラキラと煌いて見える。

その氷月は蓮をサンドバッグのように殴り続けた。

最早、立ち上がる力も残ってないようなのに、更に蹴り続ける。


「ちょっと、もうやめてっ! 目当てはカイなんでしょ? だったら」

「殺しゃあしないさ。今度はあの男に囮になってもらわないとねぇ」

「囮だったら、わたしが居るじゃない! 蓮はきっと大怪我してるわ。もう離してあげて」


愛子の言葉に白露は横を向き、面白くなさそうな声を上げた。


「若様が、あんただけじゃなくて、月宮殿の巫女にも種付けするんだってさ。人間の女のどこがいいのか、あたしにゃわかんないねぇ」


愛子にもさっぱりわからない。

なんに化けるのか知らないけど、初体験の相手は人間のほうがいいに決まっている。いや、何回目でも人間のほうが……。

そこまで考えて、でも海って人間なの? 複雑に悩む愛子であった。