月宮天子―がっくうてんし―

その瞬間、目の前に白露の鉤爪が映る。

それも、ほんの数センチしか離れていない位置だ。


「余計なことをしてご覧。目玉に爪が食い込むよ」

「わ、わなって何?」


白露の嘴が桟橋の端を指した。そこには誰かがぶら下がっている。

白い半袖のブラウスがやけに目立つ。周囲が真っ暗なせいだろう。濃い色のミニスカートを履いているみたいだ。胸元に何かが揺れる……リボンだろうか?

そこまで考えて、愛子はハッと自分を見下ろした。

ちゃんと制服を着ている。ホッとした反面、あまりにもよく似た格好に、嫌な予感を覚えた。


蓮も桟橋の端にぶら下がる人影を、愛子だと思ったみたいだ。

周囲を窺いながら、慎重に近づく。


(バカッ! それってわたしじゃないわよ!)


叫びたいが、ちょっとでも動くと白露の爪が今にも右目に突き刺さりそうだ。


蓮は『光剣』に手を添え、ゆっくり桟橋を進んだ。

真横まで近づいた瞬間、白いブラウスが弾け飛ぶ。しかしその直後、蓮も『光剣』を翻した。


「あらあら、バレてたみたいだね。流火じゃヤバイかもねぇ」


愛子は白露の爪が邪魔しない左目で、蓮と流火の戦闘を見つめた。