愛子はフッと考えた。

そう言えば、獣人族が宝玉を探す理由は聞いてない。盗んだ理由は、月島を沈めるため? じゃ、集めてどうするんだろう? やっぱり巨大化して街を襲うとか?

ごちゃごちゃ考えながら、愛子は思い切って答えた。


「そうよ! ぜぇ~んぶ知ってるんだからね! あの、蓮さんとか朔夜さんとか……もう、マブダチなんだからっ!」


ただの餌と思われたら敵わない。ハッタリのひとつも利かさないと……愛子はそのつもりで大見得を切る。


「だってさ、若様」

「えっ?」


流火は、愛子の頭越しに誰かに話し掛けた。

愛子が振り向こうとした瞬間――大きな手に顔を覆われ、愛子はこれまで感じたことのない恐怖に全身が包まれる。


「ちょうどいい。奴らも呼び出せる」


愛子は、背筋がゾクッとした。


その声はとても低く、エコーが掛かっていて……そう、地獄の底から響いてくるような。


そこまで考えたとき、急に首を絞められ――。


(カイ……たすけて……)


愛子の意識は暗闇に落ちて行くのだった。




~5章につづく~