聞いたことのあるハイテンションの声に、愛子はビクッとして振り返る。

どうやら、最悪のパターンになってしまった。


「あ、あんた美少年虎っ!」


ホワイトタイガーに変化する流火だ。

今日はまた、その人型に似つかわしいセーラー服を着ている。どうやって手に入れたのだろう。知りたいような、知りたくないような……愛子はやっぱり聞くのをやめた。


「探したんだからね、お姉さん。今日は、あの『月宮天子』は一緒じゃないんだよね」


緑魔人みたいな海でも流火は怖いらしい。

周囲を見回す仕草は、虎よりミーアキャットみたいだ。


「カイに用なの? だったら」

「違う違う。いや、違わないけど、違うんだ」

「違うのか違わないのか、どっちよ!」


どうも、流火とのやり取りは漫才口調で、ボケとツッコミである。


「だから、若様がヤツに会いたいんだってさ。で、そのためにあんたを連れて来いって」

「若様? 何? あんたたち獣人族に若様がいる訳?」

「ナニナニ? ひょっとして……僕らのこと、月島の連中に聞いた訳? じゃあ、僕らが宝玉を探してる訳とかも」