月宮天子―がっくうてんし―

突如現れた巨大ヒグマに、海は一の前で変身して戦った。

だが、圧倒的なパワーの前にぶちのめされ、老人ホームの壁に叩き付けられた。海は全身が痺れて、意識が遠くなる。

やられるのかな、と覚悟した瞬間、心臓に嵌った『翠玉』が海から飛び出した。

すると、ヒグマは海を無視して『翠玉』を追いかけて行ってしまう。ホッとした瞬間、海はほんのわずか気を失ったのだった。 


「あ……奴、は?」


数秒か数分かわからないが、意識を取り戻した海は、目の前に佇む一に声を掛けた。


「あの、玉を追って……行った」

「そうか。クソッ! 体中が痛い。背中が焼け付くようだ」


舌打ちしつつ、どうにか体を起こす。数回深呼吸して、やっと普通に息ができるようになった。ここまでやられたのは初めてだ。

だが、ヒグマをこのままにはできない。

海はふらつきながらも立ち上がろうとした。だがそのとき、ようやく一の様子がおかしいことに気付いた。


「どうした? 何があった?」

「え……。あの、あんたから緑の玉が出たろ? そしたら青い玉が転がって来て、それをあんたの中に入れたら助かるんじゃないかって……それで」


海は、一瞬で顔面蒼白になった。


「まさか、青い玉を掴んだのか? どこに行った!?」

「それが……なんか、消えちゃって」


そこまで言ったとき、一は突然苦しみ始めた。両腕で体を抱え込むように、地面に転がる。

直後、少年の体から青い炎のような煙が立ち昇り――