そろそろ家に帰ろうと言ったのは母だった。
私たちは立ち上がり、それぞれに服の裾をはたき、父は足元に転がっていたボールを拾った。
一番フェンスの扉に近かった私がそれを開け、振り向くと。
そこに、両親の姿はなかった。
父が先ほど拾い上げたボールが、物悲しげに落ちている。
そして、悟った。
「・・・・行っちゃったんだね、二人とも」
その瞬間、強い風が吹き、木々の葉がざわざわと音を立てた。
気づけば短かったはずの髪が、胸にかかるほどの長さになっている。
もう、魔法はとけてしまった。
両親のいた辺りに転がっていたボールを拾い、しっかりと胸に抱えると、まだそこにはぬくもりが残っている気がした。
お父さん
お母さん
ありがとう――・・・・


