「いやぁぁぁぁっ!あなたっ!やめてぇっ!」

「だまれだまれぇっ!」

バッシャッアーン

怯えながら必死に止める妻。我を失い暴れる父。

「…っ…」

息を殺して泣く、子供。

普通の家庭にはあり得ないほどの両親の喧嘩。

もはや、これが喧嘩と言えるのかさえ曖昧だ。

でも

「きゃぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!!ぐ…っあぁ。あぁあ゛…」

バタンッ

いつかは、なおると

「フッハハハハハ」

信じて、いたのに…。





―…―……―

「…っ」

ピィピイとすずめが鳴く爽やかな朝。

すっきりとしない目覚めはいつものことだが、今日は尚更だった。

そんな、少年の目覚めをいつも見ている彼。月野 新(つきの、あらた)は、毎度毎度の同じ言葉を言った。

新「また…あの夢か?」

その問いにいつもの同じ言葉を言う少年。柧此瀬 響(ここのせ、ひびき)は、だるい身体を起こしながら新に言った。

響「別に…」

予想通りの言葉にため息をはく、新。

新の態度に申し訳なさを感じる響だが、こればっかりは、いくらパートナーとはいえ教えることは出来ない。

響と新は、裏社会で有名なフィーリーズという殺し屋。そのなかでも響は、紅麗の響(こうらいのひびき)と言われている。フィーリーズのなかでは、神の子少年と称えられているのだ。

そんな皆の扱いなんて嬉しくない。ただ、うざいだけといつも言う響だが新は実は響が嬉しがっているのを知っていたのは秘密である。