寝不足が続いていたせいか、うとうと眠ってしまった。
 扉の開く音がして、目を開くと、金髪のかわいい女の子が立っていて、食事を持ってきてくれた。
 だが食事どころではない。
「頼む、ここから出してくれ」
 大の大人がうるうるした瞳で懇願する。
 娘は引きつり笑顔で答えた。 
「私は牢獄長官の娘で、ロゼッタといいます。お父様に聞かないと・・・・・・」
「じゃあ頼んで〜。頼むからここから出して〜」
「き、きたないなあ。ほら、これで鼻水ふいて。もしかしてあなた、鎧着た人に無理やり連れてこられたでしょ」
 私はうなずいた。
「だろうとおもった。あの人、シグルズっていうんだけど、血の気が多くて。だから北欧人は嫌いよ。まあ、陛下なら何とかしてくれるよ」
 ロゼッタは髪をかきあげて微笑んだ。
 そのしぐさがかわいか・・・・・・じゃない!
 それではロリコンおじさんになってしまうじゃないかっ。
「陛下ってどんな人?」
 と私は尋ねた。
「気の弱い人でねえ。宰相の言いなりなの。まったく、王様の器がないって言うかぁ」
 なんだそりゃ・・・・・・。
 ぜんぜん、だめだめじゃん!
「俺、ここから出られるかな」
 とっても不安なんですけど。
 ロゼッタはそんな私の気持ちを見抜いたのか、豪快に肩をたたいてきた。
「男でしょ。しっかりしなさいよ。運を天に任せれば、きっと平気だって」
 ばかやろう、俺は神なんか信じてねえよ・・・・・・。
 ああ、これからどうなるんだ!?  


 給料くれるなら・・・・・・って、陛下に言っちゃった後で俺、後悔した。
 もしかして、とんでもない約束した・・・・・・?   


 ま、まあ、牢獄よりはマシだろう。
 あの、座ったらケツが痛い床なんて、二度とごめんだ。
 私は騎兵隊長とやらに会うことにした。
「どうぞ〜」
 と軽い口調で私に声をかける。
「騎兵隊長って、あんたか」
 そいつは先ほど私を連行したシグルズ、というヤツだった。
「傭兵ってお前のことだったか。俺の修行は厳しいぞ」
 シグルズは鼻を鳴らしながら、羊皮紙に何かを書き込んでいた。
「それは、なんだい?」
「あん? お前、羊皮紙も知らぬのか。おくれているな」
「コピー用紙だったら知ってるよ」
「こぴってなんだべ? こいつはな、伝令に渡す貴重な手紙だ。お、そうだ。初仕事を頼もう。お前、こいつを持って、相手国に伝えてこい」
 いきなり手紙を渡された。
 いいっ!? 俺にどうせいというんじゃ。
「あ、あの、なんていってもっていけば」
「なんて? きまってんだろ、戦争しますからって言え。相手国の王は、グスタフという。我が王にケンカを吹っかけてきたのだ。陛下は穏便に済まそうとしておられるが、宰相殿は違う。そこで戦争を・・・・・・」
「せ、せんそう!? マジかよ。世界平和条約はどうなんったんだ!」
 シグルズは不思議そうな顔をした。
「世界平和? はて、そんなもん知らぬ。それよりも、さっさといってこい」