「タローさんよう、ラリ子ちゃんを倒しちゃって、まあ。どうするんだい」
「どうするって何が」
 ヘルギくんがにやにやしながら私に尋ねた。
「メシは誰が作るんだよ・・・・・・」
 あ、しまった・・・・・・。 
「な? やべえだろ」
 いや、でもヘルギくんが言うのは、メシ作らせるためだけに生かしておけばよかった、という言い方とも・・・・・・。
「それならヘルギくんに差し上げます」
 私が気弱な営業スマイルで言うと、とんでもない! と、彼は勢いよく左右に頭を振った。
ほ、ほらみろ! 誰だってそういうんだ!
「誰もラリ子のよさをわからないなんて、かわいそうな女だ・・・・・・」
 ラリ子の亡骸に両手を合わせた。
 なむなむ。
「うう〜ん」
 ラリ子がうめいた。
 ・・・・・・やっぱ、不死身だ、コイツ!
「いやぁぁぁぁ〜! ゆるしてぇぇぇ〜」
 私はヘルギくんに飛びついた。
 今助けを乞えるのは、彼しかおらんぜよ!
「前が見えねえっつのっ。おいタロー、おりろ!」
「そそそんなこといったってぇ、ラリ子が復活しちゃうよ〜、とどめを!」
「とどめかいっ」
 お兄ちゃんがツッコンだ。
「太郎ちゃんじゃない。どうしたの」
 あっ、いつものラリ子だ!?
 というか、テンションは低め。
 おかしい・・・・・・。
「あんたにやられたら、すっきりしたわ。五十肩も治ったし」
 いつものごとく、げはげは笑う。
「ご、ごめんよぉ、ラリ子ぉ! 俺が間違ってました」
「わかればいいのよ」
 ヘルギくんの独り言が背後から聞こえた。
「な、なんつう夫婦! 俺には到底理解しがたいな!」

 しかし、クロノの野望はまだ終わっていないはずだった。
 なにせ、私の心臓が狙われたまま。
 いつ襲いに来るかとびくびくしながら、会社で営業を続けていたが・・・・・・。
 お兄ちゃんやヘルギくんとは、ときどきあの魔法の鏡を使って話はする。
 そのおかげで、課長に昇進した私は、「変態課長」のあだ名がついちゃった。
 ぶぁかものっ、俺は変態じゃねえ!
 いいたい、いいたいが、ここはこらえろ、俺は課長なんだからっ。
 島○作めざすんだからっ!


 おしまい。