あ、そこじゃなくて、手・・

そんなこと言えるはずもなく、

腕でも十分に熱が上がる。


「これ、二枚お願いします。」

優斗は受付のお兄さんにチケットを渡した。

「いってらっしゃい。」

黄色と青の鮮やかなストライプの帽子をかぶったお兄さんの、爽やかな声と笑顔に見送られて、優斗に腕を引っ張られる形で入場をした。



「おー!」
「わぁ!」

二人とも、真上をすごい音を立てて通り過ぎたジェットコースターに歓声を上げた。


ぐるん、ぐるん。

二回転を終えた次は、急降下。

気付いたらジェットコースターを目で追っていたわたしの前に優斗の顔がうつる。


「なに、見とれちゃってんの?瀬菜。」

「え、いや・・」

わたしは絶叫系が大の苦手だ。

「そっかそっかぁ。」

腕を組み、大きく頷いた優斗は、にっこりとほほ笑んだ。

「瀬菜は、ジェットコースターが好きだったよねぇ。」


・・こいつ・・・優斗はもちろんわたしが絶叫系が苦手なことを知っている。


「乗ろっか!」
明るく言ってもだめ。

「やだ!」
もちろん即答だ。

「乗るぞ!」
男らしく言ってもだめ。

「やーだー!」
まだ死にたくない。


はたから見たら駄々をこねる子供とそれをたしなめる親に見えないかもしれないやりとりを何度か繰り返しながら、結局ずるずると乗り場の前に連れてこられていた。



「せっかく来たんだし。乗れるものは乗ろうぜ、身長も足りてるんだし、な?」


優斗のドアップと、

優しい「な?」に、わたしは首を縦に振るしかできないのだ。