「あっそ。」

優斗はそう言ってからわたしの腕を離し、わたしからも一歩下がった。

あ・・、怒らしちゃったかな?
少し不安になる。

優斗はカバンから二枚のチケットを取り出して、わたしの目の前に突き出した。

「誰が行きたいって言ったの、遊園地。」

「・・わたしです。」


「今日は何の日。」

「・・二か月記念日です。」


わたしは下を向いた。





サッカー部のエース。
肌は真っ黒に日焼けしていて、暗闇では白い歯だけ光る優斗。
いつもはお調子者で、下ネタだいすきで、巨乳好きで・・。

優斗のことなら、何時間でも喋れる。

近所に住んでいる優斗とは、保育園の頃からずっと一緒で、
わたしは気付いた時から優斗が好きだった。

幼馴染にまつわる甘酸っぱい話がたくさんあるように、
わたしもまた、優斗に切なく片思いをしていた。


優斗はわたしには昔から意地悪ばかりだったし、
中学のころには優斗に彼女ができて、この淡い初恋も砕けちったこともある。

わたし達らしい、告白らしからぬはちゃめちゃな告白から二か月。







・・優斗が体をかがめてわたしの顔を覗き込んだ。


「さっきはごめん。すねんなよ、・・な?」


うぅ、まただ。


わたしの顔は一気に赤くなり、首をぶんぶんと縦に振るしかできない。


「行こう、約束してたもんな、あの観覧車乗るの。」


「うん、ごめん。」




・・遊園地の入口まであと100メートルだ。