「ご乗車ありがとうございます。」
県の中心地からは少し離れた街にある、少し古めの遊園地。
家族連れに、カップル・・、他の人気テーマパークに比べれば人数は少ないものの、休日はたくさんの人がここにやってくる。
・・それぞれの、物語を持って。
わたし、真中 空(まなか そら)は、この古びた遊園地で働く23歳。
担当アトラクションは、観覧車。
そりゃあ大きな遊園地に比べたら、大きさも、イルミネーションも劣ってしまうけれど、わたしはこの遊園地の観覧車が本当にすき。
だから、ここで働けることに誇りを持っている。
観覧車はいつも、同じペースで、ゆーっくりとまわる。
ゆーっくり、ゆーっくり。
でも、気付いたらあっという間に一周してる。
夜になったら、赤や、黄色や緑・・
原始的な色だけどちゃんと光る。
なんだか懐かしくなるような、少し色褪せたペンキも、まぶしいイルミネーションも、全部すきだ。
一番上に行けば、街全体が見渡せられる。
ここから見える夕陽はね、本当に素敵なの。
ご乗車いかがですか?
