お母さんはあたしに、自分の嫌いなものを好きになってほしくないと思っている節があるけれど、あたしはお母さんに、あたしが好きなものを認めてもらえたらいいと思っている。

好きになってほしいとは言わない。

けれど、せめて認めてもらえたら……。

その気持ちが、大きな声となって出たのだ。


「おい、なんだよ、騒々しいな」


すると、少しして、騒ぎを聞いた間宮さんが怪訝な顔をしながら階段を下りてきた。

お母さんとあたしは一瞬押し黙って、それからめいめいに口を開く。


「あら、珍しい。お客さん? 何もないところへようこそいらっしゃいましたね」

「すみません、うるさくしてしまって。紹介します、間宮さん。……うちの母です。お母さん、こちら、お客さまの間宮さん」


お母さんはにこりともせずに皮肉を交えて言ったものだから、あたしは気が気じゃなくなりながら間に入って2人にそれぞれを紹介した。

間宮さんとお母さんは社交辞令的に会釈をしただけで、それから気まずい沈黙が流れる。


この空気をどうにかしなきゃと切実に思っているのは、おそらくあたしだけだろうと思う。

お母さんは相変わらず、冷ややかな視線のままで口を開く気はない様子だし、間宮さんのほうも、特に何かを言う素振りはない。