相当ぼんやりしていたらしく、あたしはまさかの“花火を食べる”という偉業を、いつの間にか達成していたらしかった。
……いやいや。
本当は花火を見ながらりんご飴を食べているのだけれど、浴衣のせいか、間宮さんがあんまり優しいせいか、だいぶ調子が狂う。
こんなに優しい人だったっけ?
あたしの中の勝手なイメージではここまで優しいのは想定外で、だからかえって、熱に浮かされたみたいに思考回路が鈍るのだ。
「なあ、やっぱりお前は聞かないのな」
「……はい?」
「この前、昼間にやっただろ、展望台で打ち上げ花火。聞かないなら別に構わないんだけど、気になるなら話してやってもいいぞ」
すると、間宮さんが口を開いた。
なんだかよく分からないけれど、遠回しに昼間の花火のことを聞いてくれ、って言っている?
と解釈してもいいのかな。
……ううん、勝手にそうしよう。
どうせ思考回路は鈍っているし、と高をくくることにして、あたしは小さく咳払いをすると、「じゃあ」と少しだけ姿勢を正した。
「何か理由があるんだろうなとは薄々思っていました。聞いてもいいですか? あの花火、どうして昼間にしたんです?」

