「あたし、将来は声の仕事に就きたいと思っているんです。声優とかナレーターとか、いろいろありますよね。それで、趣味で小説の朗読とか……しているんです」


パーカーのポケットから、出るときに入れてきた文庫本を取り出し、間宮さんに見せる。

今、練習で朗読しているのは、最近好きで読んでいるミステリーものの小説だった。

文章に癖がなくて読みやすく、シリーズ化もされていて、新刊が出るたびに集めている。


「へぇ、こういうのが好きなんだな、お前。意外っつーか、女子はみんな恋愛モノの漫画とか小説とかが好きなのかと思ってた」

「ふふっ。あたしも恋愛モノは好きですよ。ただ、今はミステリーが特に好きなだけで、女子らしいものもちゃんと好きです」

「ほぉ、そっか」


間宮さんが本当に意外そうに言うものだから、思わず少し笑ってしまった。

一体あたしにどんなイメージを持っているんだろう、とちょっと気になってしまう。


「で?」

「……はい?」

「朗読しないのか? 今日は。朗読するとこ、何気に見てみたいとか思ってんだけど」


間宮さんはあたしの手の中にある文庫本を指差し、今度はいくぶん興味がありそうに言う。

やっぱりか……。どう断ろう。