まさかあたしのほかに誰か人がいたなんて思ってもみなくて、ついつい、恥ずかしさのあまり思いっきり叫んでしまった。
「盗み聞きとは相変わらず失礼な奴だな。先にいたのは俺だ。お前はあとから来て、勝手に何か言ってただけだろうが」
「……う。そうでしたか」
「恥ずかしいからって、俺のせいにするな」
「ごもっともデス」
確かに盗み聞きは失礼だ。
反省、反省。
「それより、間宮さんはいつからいたんです? あたし、今朝はかなり早く目が覚めてしまって、民宿を出てくるときも、まだ5時ちょっと前だったんですけど」
いろいろと話を逸らすためにも、とりあえず当たり障りのないことを聞いてみる。
あたしの密かな習慣を知られてしまうと、きっと間宮さんは、ニンマリと笑いながら「やってみろ」と言うに違いない。
それはかなり恥ずかしい……。
すると、間宮さんは大きなあくびと伸びをしながらあたしの隣まで来ると。
「あー、昨日の夜から」
と、しれっと言う。
「えぇぇっ!?」
「驚きすぎだっつの。ま、昨日は出歩いたし眠れそうな気がしたんだけど、どうにも目が冴えるわけ。で、散歩すっかーって感じで一晩」
「なんて軽いノリ……」
「いいだろ、別に」