けれど。
それを知ったとしても何も変わらないし、間宮さんは間宮さんで、あたしはあたしーーお客さんと民宿の人間という関係は、すでに1週間前から成り立っているのだ。
とりあえず、ハルに報告しよう。
あの間宮さんが、珍しく「悪いと思ってんだ」と言っていたって。
きっと嫌な奴だと誤解したままだろうし、さっきみたいに外でばったり会うことはあっても、民宿に顔を出してくれないのは寂しい。
「今日も暑いですねー」
「いちいち言うな、余計暑い」
「じゃあ、もう1つアイス買って、食べながら帰りましょうか。今度はあたしが出しますよ」
「……柚子シャーベットな」
「ふふっ。はーい」
そうして、もう一度史料館の売店に寄り、柚子シャーベットを2つ買って民宿に戻った。
あまりの暑さに、途中、シャーベットがただのジュースになってしまうほどで、間宮さんはまた悪態をつき、あたしはそれを「まあまあ」となだめながら密かに彼に感謝した。
あたしの中では、まだハルへの気持ちに踏ん切りがつかず、例えるなら、いまだに梅雨が明けきらない状態だったのだけれど。
やっと今日、間宮さんと話したおかげで、気持ちの面でも夏が始まったような気分だった。