「そ、そんなことよりっ!」
「あ?」
「前から聞いてみたかったんですけど、どうして分かったんです? あたしがハルに片想いだったことや、彼女がいること」
一応、いつも持ち歩いているコンパクトミラーで海苔の有無をさっと確認し、話題を変える。
あの日は会ってからまだ2日目で、前の日も宿泊について事務的な会話をしただけだった。
あたしなりに推理はしてみたけれど、プライベートなことは何も言わなかったはずなのだ。
ハルの話をしよう、という当初の目的を果たすためにも、少し強引だけれど話題を戻した。
「ああ……。お前が不毛な恋をしてるのは見てすぐに分かった。はじめは誰にそうなのかは分からなかったけど、ハルと一緒にいるときの雰囲気つーの? 空気がなんか違った」
「空気、ですか……」
「そ。それで、こいつはこの正義感丸出しの奴のことが好きだけど、残念ながら彼女持ちだ、ってなんとなく察しがついたわけ」
「……へ、へぇ」
ほんの少し接触があっただけでそこまで分かってしまうなんて、あたしはどれだけ未練タラタラなオーラを出していたのだろう。
聞けてよかったのか、聞かないほうがよかったのか、どっちにしろ恥ずかしいことには変わりはなくて、思わず落ち込む。

