かけぬける青空は、きっと君とつながっている

 
「そういう、とてつもなく大きなものを背負って、21歳になる年の夏、彼はこの町にやってきました。大学は結局、仲間たちとの約束の邪魔になるため、3年の途中で辞めたということでしたが、あとで、逃げただけなんだ、と、そういうことも打ち明けてくれました」


この目で、肌で、心で……体で感じる全てのものは、亡くなった仲間たちに捧げる、という思いで旅に出たのではないかと、あれから2年経った今のあたしは、そう思っている。

“導きの蛍”を見た帰り道に、逃げただけ、と言ってはいたけれど、旅に出ることが、2年前の間宮さんの『今しかできないことは後先なんか考えないで今やる』ことだったのだろう。


「けれど彼は、私にたくさんのものを残してくれ、私の全てを変えてくれたのですが、そのお礼さえ……別れのあいさつさえさせてくれずに、夏の終わりとともに、ふっと民宿を出ていってしまいました。誰にも、何も告げずに」


それは本当に突然で、前触れらしい前触れもない中で起こった出来事だった。

いつものように、朝10時に「起きてください」と“潮風の間”をノックし、いつものように、寝癖の髪と少し腫れぼったい目をさせながら「うっさい」と悪態をつきながら部屋から出てくる間宮さんを待っていた、あの頃のあたし……。