「ありがとうな、待っててくれて」
「あたしのほうこそ、この町にまた来てくれてありがとうございます。待っててよかった……」
間宮さんはおそらく、いつかまた旅に出るのだろうと思うし、長い旅の終着点は、この町ではなく、きっと彼が生まれ育ったあの街だろう。
そうして旅立つときや、旅の終着点では、あたしも一緒なのか、あるいは、この場所で民宿を守りながら帰りを待つことになるのか……。
それは、分からない。
けれど、必ず連れていくと約束してくれたし、旅に出るときは「行ってきます」と、そう言ってくれると宣言だってしてくれた。
2年前、青い空の向こう側に行く、と遠まわしな言い方で別れを告げられたときとは違う安心感が、あたしの中で愛しさに変わっていく。
「間宮さん、好きです」
「……なんだよ、いきなり」
「大好きです」
「だからなんーー」
彼が「だよ」と言い終わる前に、間宮さんの唇を、あたしの唇でそっとふさぐ。
1秒にも満たない、星が瞬くようなわずかな間のキスでも、即座に大胆なことをしてしまったと慌てて唇を離すと、ひどく驚いた顔をしている間宮さんと目が合い、とっさに逸らす。

