明梨とあたしの席は離れているのだけれど、いつの間にか明梨がそばに来ていて、心配そうにあたしの顔を覗き込んでいる。


「どうしたの、菜月。話しかけてもずっと上の空だし、いきなり泣いちゃうし……」

「え?」


そこでようやく、あたしは今の自分の状況に気づき、それでも半信半疑で頬を触ってみると、涙のあとが指先を濡らして、やっと実感した。


「菜月、なんか今日は、朝からずっと変だったよ。もしかしてあたし、何かひどいこと言っちゃってたかな……? ほら、よく考えないで言う癖があるでしょう、あたし」

「ううん、明梨は全然。ちょっと失恋しちゃって……。ごめんね、心配かけちゃったね」

「……失恋?」

「うん」


ここまで心配をかけてしまっては、もう明梨には黙っていられない、そう思ったあたしは、読んでみて、とハルの手紙を明梨に差し出す。

明梨はそれにざっと目を通すと、丁寧にたたみながら「そっか……」とだけ呟いた。


「明梨には前に話したことがあったよね、夏休みはおばあちゃんの民宿を手伝うって」

「うん」

「ハルは、そこの近所の子なの。昔からすごく仲が良くて大好きだったんだけど、あたしだけみたいだね。……恋してたのは」