「……あたしも行くよ。明日」
「そっか、寂しくなるな」
「メールも電話も、いっぱいするね」
3人で柵から身を乗り出し、体いっぱいに町の空気を吸い込みながら、短く言葉を交わす。
夏休みも、もうじき終わる。
あたしもそろそろ、自分の進むべき道をきちんと考えはじめなければならない時期に差し掛かっているし、新学期を迎える準備もある。
今後の進路を、大学に進学するにしても、声の仕事に就きたいという夢のため、専門学校へ進むにしても、就職を選ぶにしても、とにかく一度、家族とゆっくり話す機会を作ったほうがいいはずで、そのためには、あたしが家に帰らないことには何もはじまらないのだ。
「いろいろ大丈夫?」
おそらく、間宮さんがいなくなったことを長く引きずるかもしれない、と心配してくれているのだろう、香ちゃんはそう、そっと訊ねた。
声の調子はやや弱く、香ちゃんを見ると、やはり彼女の瞳は不安げに揺れている。
「あたしなら大丈夫だよ!それより、2人はどうなの? いろいろ大丈夫? って聞きたいのは、むしろあたしのほうだったりするよ?」
冗談っぽく言い、2人を交互に見やる。
2人はつい先日、駆け落ちをし、間宮さんとあたしが隣の県まで行って見つけてきた、という経緯を持つ、熱く熱く、青い2人だ。

