あたしも初めて聞いた話で、おばあちゃんが作ったものなのか、本当にこの地域に昔から語り継がれている話なのかは分からなかった。
けれど、信じたいと言った間宮さんと同じように、あたしも信じたいと思ったし、実際に語り継がれている話なのかどうかも、深く追求しなくてもいいんじゃないか、と思う。
幻でも願望でも妄想でも、こうして間宮さんたち仲間7人の蛍を見ることができたのだ。
それだけで十分なのではないだろうか。
蛍が遊ぶように飛んでいる様子を静かに眺めていると、しばらくして、どこからともなく強い風が吹き流れ、思わず間宮さんと目をつぶる。
木々や草が風になびく音がやみ、ゆっくりと目を開いてみれば、たった今まで飛んでいたはずの蛍は、もうどこにも姿はなく、月明かりに照らされた祠だけが、ひっそりと佇んでいた。
「……行ったか」
「そうみたいですね」
蛍がいなくなった祠を見つめ、言葉を交わす。
なんとも不思議な体験だった。
一言ではなかなか語り尽くせないものの、胸がじんわりと温かくなり、間宮さんに「戻るか」と促され、道なき道を展望台へと引き返すあたしの心の中は、安堵感と爽快感に包まれる。

