「おやおや、最初から布団で寝ていなかったのかい。そうさねえ、私が起きていったときには台所には誰もいなかったよ。昨日は航君もたくさん飲んだみたいだし、そんな体じゃ、どこにも行けるはずはないと思うんだがねえ……」
「……う」
完全に墓穴を掘ってしまったらしい。
台所で寝てしまったことはおろか、間宮さんに部屋まで運んでもらったことや、彼に対するあたしの気持ちを暴露してしまったも同然の聞き方だったことに、反射的に頬が熱くなる。
おばあちゃんを相手に照れても仕方のないことかもしれないけれど、猛烈に恥ずかしい。
ということは、現実に起こったかのかは分からないものの、あの頬に感じた奇妙な感覚も、間宮さんによるものだったりするのだろうか……。
思わず頬に手を当て、考え込む。
「今、航君が風呂場を使っているから、出たら菜月も入ってくるといいよ。ちょっと2人に頼みたいことがあってね。いいかい?」
「……え、あ、うん」
すると、おばあちゃんは、クスクスという笑いを絶やさないままにそう言い、あたしはとっさに、了承の返事を返してしまった。
間宮さんとあたしに頼みたいこと……。
一体、何だろう。

